1-1 VLANとスパニングツリープロトコル(STP)
スパニングツリープロトコル(STP)には、以下の様な明らかな問題がいくつかある。 ●転送遅延により収束が遅くなることがある。これは、ユーザーやアプリケーションが
機器障害時の即時回復を期待するような現代のネットワークでは、許容されない。 ●すべてのVLANに適用される汎用的なスパニングツリープロトコルは、最終的に一部のユ
ーザーには、最適でないパスをもたらしがち。 その結果、上記の問題を解決するために相次いで新たな開発がなされてきた。
それには、独自プロトコルもあれば、標準ベースのプロトコルもある。ここでは、Ciscoが現在サポートしているプロトコルをとりあげ、その選択を比較検討していく。 1-2 PVST VLANごとに個別のスパニングツリーを稼動する。PVSTは、各VLANがルート、ポートコスト、パスコスト、プライオリティに関して一意のSTPトポ
ロジーを持つ。 PVSTのメリット・デメリットは以下のとおり 【メリット】 ●スイッチ型ネットワークが収束するときのSTP再計算時間を短縮する。 ●トポロジー変更によるスパニングツリーの再計算を特定のVLANに限定できる。 ●1つのSTPをもつ大規模ネットワークの場合に比べ、高速に回復できる。 ●管理目的で、サブネットごとに転送パスを制御できる。 ●VLANごとのロードバランスが可能になる。 【デメリット】 ●すべてのSTPを管理する必要があるため、スイッチの利用率が問題の要因となる。 ●ISLが必須 ●Cisco独自のプロトコル 1-3 CST 【メリット】 ●STPが1つのため、帯域幅を消費するBPDUの数は少なくなる。 ●ネットワーク内にSTPが1つしかないため、スイッチが実行するSTP処理も少なくなる。
【デメリット】 ●スパニングツリードメインが大きくなってしまう。 ●その結果、収束時間を短縮することができない。 ●どのVLANで再計算が発生しても、全VLANが再計算に巻き込まれる。 1-4 PVST+ PVST+はPVST標準の拡張版。PVST+によって、CiscoスイッチはIEEE802.1Q 標準をサポートできる。Catalystスイッチのデフォルトのスパニングツリーモード。またPVST+はIEEE802.1QのCST領域にまで渡るリンクに対するサポートを追加することによって、PVSTプロトコルの機能を
拡張した。 【PVST+の特徴】 ●複数のスイッチにまたがるポートとランキングやVLANIDに関する矛盾を通知する。 ●PVST BPDUがマルチキャストデータとして、IEEE802.1QVLAN領域を通過できるようにトンネル化する。 ●IEEE802.1QのCSTとCiscoのPVSTプロトコルとの互換性を提供する。 ●転送ループの発生を防ぐため、ポートが矛盾したBPDUを受信するのを阻止する。 PVST+では、VLANごとにSTPインスタンスを実行するため、ブリッジIDにVLANIDを含める必要がある。
1-5 MST ( Multiple Spanning Tree ) MSTは、PVSTを拡張し、IEEE802.1sで標準化され、PVST環境とCST環境における双方のメリットを取り入れて
実装される。
PVSTでは、VLANごとにスパニングツリーインスタンスを作成するが、VLANの数が増えるとスイッチのCPUの負荷が増える。
またVLANのごとにBPDUがネットワーク上に送信されるため、ネットワークのトラフィックが増えるという問題点がある。こうしたPVSTの問題点を解決するのがMST。
PVSTに比べると、スイッチのCPU負荷、ネットワークのトラフィックの
減少、スパニングツリーインスタンスを物理トポロジーと一致させると
いったメリットがある。
複数のVLANで1つのスパニングツリートポロジを共有する方式をCSTと呼ぶ。
VLAN数に関係なく、ネットワーク全体で1つの大規模なスパニングツリープロトコルを稼動する。
CSTは、デフォルトでは、すべてのVLAN上で稼動し、すべてのスイッチがルートブリッジを決定するための選出プロセスに
参加する。
「IEEE8021Q」
でトランクを組んだ場合は、VLANがいくつあっても共通のスパニングツリーを使う。
CSTのメリット・デメリットは以下のとおり。
そのため、
拡張システムID使用時のブリッジプライオリティは上位12ビットを拡張システムID(VLAN番号)として定義する。
MSTでは、VLANをMSTインスタンスにグループ化し、MSTインスタンスごとにスパニングツリーの計算を行う。