【マルチキャストについて】

このHPはマルチキャストについてまとめたものです

 

1-1 マルチキャストの概要

ネットワークでは、次に示す3つの基本的なタイプのIPトラフィックがルータやスイッチを通過している。

 

●ユニキャスト

「1対1」でパケットを送信する方式。1つの送信元ホストアドレスから、1つのあて先ホストアドレスに向けて送信されるパケット。これらのパケットは、ルータやレイヤ3スイッチが、ルーティングテーブルからあて先IPアドレスを見つけて送信する。

 

ブロードキャスト

「1対全」でパケットを送信する方式。1つの送信元ホストアドレスからブロードキャストあて先アドレスに向けて送信されるパケット。あて先は全ホスト(all-host、255.255.255.255)、あるサブネットに向けられたブロードキャスト、またはサブネットの一部。レイヤ2スイッチは、あて先VLAN上にあるすべてのポートに向けて、パケットをフラッディングする。

 

●マルチキャスト

「1対多」でパケットを送信する方式。1つの送信元ホストアドレスから特別なグループベースのあて先アドレスに向けて送信されるパケット。あて先は、パケットを受信しようと興味を示しているホストだけで、他のホストはあて先とならない。

ルータやレイヤ3スイッチは、デフォルトではこれらのパケットを転送しない。レイヤ2スイッチは、あて先マルチキャストアドレスのロケーションを学習することはできず、デフォルトではパケットは、あて先VLAN上にある全てのポートに向けてフラッディングされる。

ホストは、「IGMP」を使用して欲しいトラフィックのIPアドレスをルータに知らせる。ルータは自らの足元のホストがどのマルチキャストを要求しているのか調べた後、マルチキャスト用のルーティングプロトコルを使用して他のルータと情報交換を行う。










1-2 マルチキャストアドレス

IPv4のマルチキャストアドレスは、32ビットのうち第1オクテットの先頭4ビットが「1110」に決められている。残りの28ビットはグループを識別するための「グループID」になっており、使用するIPアドレスはクラスDを用いる。

 




通常、IPホストを一意に識別するためには、クラスA・B・Cが使われるが、クラスDアドレスをホストに設定することはない。マルチキャストIPアドレスは「1対多」の通信のあて先として使われるから、常にあて先アドレスとして指定され、発信元アドレスとして使われることがないという点では、ローカルブロードキャストやダイレクトブロードキャストアドレスと同じ。

★マルチキャストアドレスの種類

マルチキャストのIPアドレスはIANAによって管理され、次のアドレスグループに分類されている。




IANA により静的に割り当てられた Well-Known アドレスには以下のものがある。







 

 

1-3 マルチキャストアドレッシング

ルータやスイッチは、マルチキャストトラフィックをユニキャストやブロードキャストから区別する方法を備えている必要がある。このためには、IPアドレッシングを使うが、マルチキャスティング専用に224.0.0.0〜239.255.255.255というクラスDのIPアドレス範囲を予約する。

ネットワークデバイスは、先頭4bit(常に1110)を見て、素早くマルチキャストIPアドレスを選別することができる。クラスDアドレスを8ビット単位の10進数に変換すると、第1オクテットの数字は224〜239となる。

224では先頭ビットが1110となり、以降のアドレス範囲はクラスEアドレス(研究用)となる。

 






★マルチキャストのMACアドレス(レイヤ2)

ユニキャストのIPトラフィックであれば、レイヤ2とレイヤ3のアドレス解決を行うために「ARP」を用いる。しかし、マルチキャストアドレスのマッピングには「ARP」に相当するプロトコルがない。その代わりにOUIという値を予約しておき、マルチキャストMACアドレスが常に「01-00-5e」で始まるようにしている。

 

255.255.255.255のローカルブロードキャストがレイヤ2では、ff-ff-ff-ff-ff-ffに静的に関連付けられるのと同様に、マルチキャストアドレスもレイヤ3アドレスのビット配列をそのままレイヤ2に結びつけることにより、アドレス解決を行なう。

 

MACアドレスは48ビット長であり、その前半24ビットはベンダーコードで構成されているため、この部分は動かせない。IPマルチキャストでは、01-00-5eという専用のコードを使う。残りは後半部分の24ビットだが、後半の先頭ビット(アドレスの先頭から25ビット目)は0で固定になっている。残りの23ビットは、IPマルチキャストアドレスの下位23ビットが使用される。